三十代の潜水生活

適当に書きます

2021.6.7〜11

加齢のせいなのか6時間以下の睡眠で日中のコンディションが悪くなる体質になった。近所のベトナム人が何かを燃やしたせいでアパートの火災報知器が作動して終わったり退勤の時に線路へ侵入した老人のせいで埼玉の電車が終わったりした。

山田風太郎 "人間臨終図巻" 中・下を読む。上巻だけ図書館に置いておらず、本当は若くしての熾烈な死に様を拝みたかったという下世話な欲もあったが、病気に蝕まれて以前の溌剌とした姿を失っていく描写の方がエゲツなく感じるようになった。人物像について筆者特有の見方が挟まれるのもアクセントになっていて良い。

別冊ele-king "永遠のフィッシュマンズ"を読む。30周年記念本という特性上そうなるのだろうとは思うが当時のバンドの神々しさや世田谷三部作に強くフォーカスしておりややついていけない部分があった(誤植もやたら多い)。ただZAKのインタビューや当時のフィッシュマンズがヒップホップに影響を受けていた話とかは印象深かった。当時の思い出に真摯に向き合う朝倉加葉子の寄稿とフラットな温度を保つcero高木の寄稿が良かった。

角居勝彦 "競馬感性の法則"を読む。ウオッカらを輩出した調教師による本で、調教にあたっての馬の心情への配慮(自信を持たせる・向き不向きを自覚させる等)のような馬を育てる側の視点が新鮮で良い。競馬では経済動物という側面に対して未だに思うものがあるのでその辺を掘り下げたいと思った。

小野耕世 "アメリカン・コミックス大全"を読む。1900年代初頭の源流となる作品から新聞連載、スタン・リーとマーベル/DC、スピーゲルマンからエイドリアン・トミネといったオルタナ寄り作品やグラフィックノベルまでを貴重なインタビュー等を絡めて俯瞰していく本。後書きにあるようにアメリカンコミックスの全てを網羅している訳ではないが大きな流れは確認できるし、出版時期の都合上9.11に伴い生じたスーパーヒーローの限界などの記述が生々しく感じられ印象深かった。"キャルヴィンとホッブス" "善かれ悪しかれ"が気になる。ハービー・ピーカーのインタビューがあったのが嬉しい。

山形浩生 "新教養主義宣言"を読む。プロローグの"いろんな生活上・仕事上・あるいは単純な興味上でみんなが関心を持っている話題がブチブチとした形であちこちに散らばっている。それをうじゃうじゃとつなげていくこと。(中略)いま仕事でいっしょうけんめい計算しようとしている製薬業界の割引率を考えることと、人の失恋の悩みとに実は関係があるんだということを、ぼくは示してみせよう。〜植民地主義と鉄道の歴史と、さらには銀行の不良債権問題が、フレンチのコーヒーがまずいことと密接に結びついていることを示そう。"に胸を強く踊らされる。書籍としては著者の寄稿をまとめたものという性質ゆえアクロバティックな跳躍や異質なもの同士を繋ぎ合わせるグルーヴははっきり示されていないが、傲慢な口調の裏に熱を感じたのと20年以上前の本だがそこまで古びた印象が無いのが良かった。読みやすい本はすぐ忘れてしまうので再読したい。

LITTLE THUNDER "SISTERHOOD LITTLE THUNDER ART BOOK"を読む。アイデアの海外マンガ特集号で取り上げられていたのをきっかけに買ったけど良かった…繊細かつ生々しかったかと思えばコミカルだったりと振り幅が広い絵柄に惹かれた。短編漫画の情緒も豊かで、とにかく"絵を描いている人"という印象を受ける。

騒々しくて通勤時に聴くと元気が出る